京都観光 祭と行事 五山の送り火・地蔵盆
京都観光 五山の送り火

盂蘭盆に迎えられた「おしょらいさん」は、家で丁重なもてなしを受け、八月十六日に再びあの世に戻ってゆきます。八月十六日の夜八時から約二十分の間に、五分間隔で東山如意が岳の支峰大文字山の「大」の字から、松ヶ崎西山(万灯籠山)と東山(大黒天山)に「妙」「法」、西賀茂船山に「船」形、大北山の大文字山に「大」(左大文字)、嵯峨鳥居本の曼荼羅山に「鳥居」形の五つの送り火が次々と点火されてゆきます。
五山の送り火の起源は、「万灯籠」や「千灯籠」などと呼ばれた灯籠行事だと考えられます。室町時代以降に行われてきたとされ、あの世から戻ってきた先祖を供養し、火に照らしてあの世にお帰りいただくという、盆の特徴的な行事です。八月二十三日、二十四日に化野念仏寺で行われる千灯供養も万灯籠の行事の代表例と言えます。本来はきわめて素朴な行事だつたものが、大勢の人たちに見せるために風流化したのが万灯籠で、京都では更に多くの人に見せるための工夫が進み、五山の送り火になったと考えられています。山の斜面に火床を築き、松明で大きな文字や図柄を描くという発想が生まれ出されて完成した、特異な万灯籠行事と言えます。現在は五山と言い慣わしていますが、明治時代頃までは「い」の字や「一」の字など、他の送り火も存在していたことが確認されています。
大文字の「大」の字形の始まりについては、弘法大師空海が始めたとする説、室町幕府八代将軍足利義政が子の義尚の冥福を祈って五山僧横川景三が始めたとする説、寛永の三筆の一人近衛信伊の筆画であるとする説など諸説あります。「大」の字の意味としては、中国の古代仏教思想である「五大」に由来するものではないかと考えられています。「五大」とは宇宙を構成している五つの要素、地・水・火・風・空を指します。六波羅蜜寺では、毎年盂蘭盆の万灯会において本堂内に「大」の形に松明を浮かび上がらせています。この行事は、開祖空也上人によって始められたと伝えられていて、「五大」に由来するものとされています。
京都観光 地蔵盆

地蔵盆の運営は、町内会や町内の子供会が主体となり、町内ごとに行われます。本来は地蔵菩薩の縁日である八月二十四日の前日を中心に行われましたが、現在では、八月下旬の週末に行われています。明治時代以前は「地蔵祭」や「地蔵会」と呼ばれ、地蔵菩薩を祀るための宗教行事でした。地蔵菩薩は、数々の苦難から人々を救い、子供などの弱者を救済する仏と信じられました。
地蔵盆では、町内の人々が地蔵像を洗い清めます。子供が生まれると、その子の名前を書いた提灯を地蔵に奉納する風習もあります。子供が幼い頃は、男子は白、女子は赤の提灯が地蔵盆の期間中飾られます。大きな数珠を囲んで、子供たちとともに大人も座り、僧侶の読経に合わせて数珠を回す「数珠まわし」と呼ばれる伝統行事を行うところもあります。町内の住民が力を合わせて準備することで、地蔵盆の場が幅広い世代交流の場となり、町内の連携や協力を強めています。ただ一方で、行事の簡略化や衰退もみられることから、京都市は「京の地蔵盆ー地域と世代をつなぐまちの伝統行事」を「京をつなぐ無形文化遺産」第三号に選定しました。
京都観光 松上げ

八月下旬、京都市北部から若狭(福井県)にかけて広がる丹波山地の山里で、「松上げ」という勇壮な火の祭礼が行われます。「松上げ」とは、灯籠木などと呼ばれる大きな柱の先端の傘へ向けて、集落の男たちが火をつけた松明を投げ入れる行事です。似た行事は「柱松」などと呼ばれて全国に分布していますが、京都市北部から若狭にかけては、「松上げ」の名で、左京区花背八桝、広河原、久多、右京区京北小塩町、南丹市美山町蘆生、北区雲ケ畑で行われています。松上げの行事は、火伏の神である愛宕信仰に深く結びついており、さらに愛宕と深い関わりのある地蔵信仰とも結びついた、神仏習合的な民俗行事として今に伝えられています。
花脊の松上げ 左京区花背八桝では、かつては八月二十四日に松上げが行われていましたが、現在では八月十五日の夜に行なわれています。松上げの当日、八桝の集落では、上桂川が大きく蛇行する灯籠木場と呼ばれる平地の中央に、高さ約二十メートルの檜の柱が垂直に立てられます。夕刻になるとその周囲には千本近い地松と呼ばれる松明が立てられ、八時に投げ入れられます。投げられた地松が灯籠木に入ると勢い良く燃えはじめ、最後には灯籠木が倒され終了します。
広河原の松上げ 左京区広河原でも、八桝と同様の松上げが八月二十四日の夜にに行われます。広河原の松上げの特徴は、行事の一週間ほど前に佐々里峠に祀られている地蔵を村内の観音堂に移すことで、松上げが済むとまた峠の堂に戻されます。また松上げの後には観音堂で、「ヤッサ踊り」「ヤッサコサイ」という踊りが奉納されます。
雲ケ畑の松上げ 北区雲ケ畑でも、八月二十四日に村内にある二か所の「愛宕山」と呼ばれる場所で松上げが行われます。雲ケ畑の松上げの特徴は、それぞれの山の頂に百束余の松の割り木で文字の形を作り、それに点火する形態を取っています。文字は毎年変わります。
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